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摂津市議会の議員定数削減の否決について・2021

Ⅰ 定数削減条例案について

 2021年第2回定例会(6月)において、一部の会派から議員定数削減の条例案が提出されました。その内容は、議員定数を19人から18人に改めるものでした。

 

 そもそも、これまで摂津市議会では、選挙の年のたびに議員定数を削減してきました。

 平成 9年  定数26人

 平成13年 定数24人(2減)

 平成17年 定数23人(1減)

 平成21年 定数22人(1減)

 平成25年 定数21人(1減)

 平成29年 定数19人(2減) という流れです。

 

 これまでに摂津市議会は20年かけて、十分な改革を行ってきたと言えます。

 

 

Ⅱ 適正な定数とは

 私は平成29年に当選させて頂き、摂津市議会でこの4年間活動して参りました。

 改めて、適正な議員定数とは何かを考える必要があります。その前提としては、議会の適正な運営に支障をきたすものではあってはならない。市民に選ばれ、その責務を全うすることができる環境を維持することです。

 

 一部では、例え少人数であろうと議会は運営できる、という意見もあります。確かに運営は可能かと思いますが、議会としての行政へのチェック機能はどこまで発揮できるのでしょうか。適切なチェック機能を果たす事が出来なければ、市民の代表としての適切な役割を議会として果たすことが出来なければ、それは議会そのものの存在意義を失いかねないものです。

 

 やはり、その市における適正な議員定数とは何か、しっかりと考えなければなりません。

 

 摂津市議会の現状について、現在は19人で3常任委員会が設置されています。この常任委員会では質問※できる議員は、委員長、議長、監査を除くメンバーです。(慣例)

(※質問とは民意を行政に伝え、また行政の適正な事務をチェックすること。)

 常任委員会の構成は、総務建設委員会7人、民生委員会6人、文教上下水道委員会6人で、質問できる議員は各委員会で4~5人です。

 私は現時点での委員会構成では、この人数が限界であろうかなと感じています。市の規模に関わらず、市の議会で行うことは同じです。防災、消防、財政、建設、教育、上下水道、保健福祉、文化スポーツ、広報等々、それらをしっかりとチェックしなければなりません。議員の数が少なければ少ないほど、チェック機能が低下することは否めません。

 さらに議員の一定数の確保で、議論が増え、活発になることで、議会から様々な提案が行政に出されます。実際に本市での危機管理体制の改革、ビジネスサポートセンターの設立、中学校給食の全員喫食に向けた方向転換などなど、多くの提案が議員により提出され、行政を動かしました。様々な考えを持つ議員がいることで、市民サービス向上へ行政を動かす原動力となっています。

 

 また、旭川市議会に「議員定数及び議員報酬に関する検討懇談会資料」というものがあります。 その資料の中に、「議員定数に関する識者の意見」があり、そこには「本音で論議できる会議の最低構成人数とされるのは6~7人」と記載されています。その点では摂津市議会の常任委員会は最低限の人数と云えます。

 

 その他、議員定数の全国的傾向についてですが、「全国市議会議長会資料」によると、「市議会議員定数に関する調査結果」の人口段階別にみた市議会議員定数の状況の下記表を踏まえ、摂津市議会の定数は全国平均を下回っている状況です。(なお大阪府下の各市自体は、全国平均と比較して定数が少ない状況です。)

人口段階 市区数 1市あたり平均の議員数(人)
 5~10万未満 250 20.6

(調査対象:815 市 / 令和2年12月31日現在)

 

 また、本市の人口は増えています。令和2年国勢調査によると、令和2年の摂津市の人口は87,497人で、平成27年と比べ2,490人・2.93%増となっています。(左表参照)

  さらに摂津市の令和3年度一般会計予算が過去最高の400億円を超えるなど、市は発展しています。

 

 そして、逆に議員定数を増やすという事は、世論的に難しいのが実情です。議員定数を減らし過ぎたから増やします、という事は困難と言えるでしょう。

 

 以上を踏まえ、これまでの議会改革で摂津市議会は、適正かつ円滑な議会運営を行うための委員会メンバー数が最小限となり、かつ定数も全国平均以下という状況となっています。

 

 また、摂津市の令和3年度一般会計予算が過去最高の400億円を超えるなど、市が発展している中、さらなる議会のチェックが求められ、合わせて議員定数増が困難な世相でもあり、議員定数削減は極めて慎重に検討しなければなりません。

 

 確かに議員定数を削減することで、議員に掛かる費用を削減し、他の市民サービス向上にその費用を回す、という考え一理あります。これまでの議会改革で実施してきたところです。

 

 しかし、今後はその流れだけで行うことは、妥当ではなくなっている段階と言えるでしょう。今、慎重に検討すべき段階において絶対に議員定数を削減しなければならない理由は見当たらない状況です。

 

 

Ⅲ 条例案否決へ

 Ⅰ、Ⅱを踏まえ、現時点において、摂津市議会における議員定数削減に妥当性はあるのか。ということを突き詰めたところ、今ではない。という結論に至りました。

 これまでの議会改革を尊重し、議員定数削減の案にも一定の理解を示しつつも、より良い議会運営のために今一度、定数削減に歯止めをかけることが妥当と言えるのではないでしょうか。 

 

 そして他の会派のそれぞれの考えもあり、6月25日の本会議で定数削減の条例案は反対多数で否決されることとなりました。

 

  また単に否決するだけでなく、改めて私たち議員一人ひとりが、しっかりとその責務を果たしていることを市民の方に周知し、議会の必要性を認識して頂けるよう努力することが必要です。

 

 しっかりと説明を行い、取り組んで参ります。

 

 

Ⅳ 今後について

 条例案は否決され、議員定数19人が維持されることとなりましたが、それが未来永劫続く訳ではありません。

 

 市民のニーズに議会がしっかりと応えられなければ、あるいは人口減少が続けば、それ相応に議員定数も削減されるでしょう。ほぼ可能性は0に近いと思いますが、人口増加が続けば、議員定数を増やすという事も選択肢に入ります。

 

 時代のニーズ、そして議会の必要性で、議論され定数は決まっていくことでしょう。