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手取りが減っていく?!負担増大の社会保険料、後期高齢者医療制度を通じて


Ⅰ はじめに

 

 令和6・7年度の後期高齢者医療制度(75歳以上)での保険料が1人あたり年平均8,002円増加します。当然のこと現役世代の負担もしかりです。

 

 

 後期高齢者医療制度での保険料の増加は、その保険料等の4割を負担する現役世代の手取り減少を招くなど大きな影響を与えます。子育て世代の手取り減少は、少子高齢化を加速する要因の一つと考えています。

 

 大阪府後期高齢者医療広域連合議会(令和6年2月14日)にて、その要因について確認するとともに、保険料の増加の主たる要因となっている医療費の抑制をどう取り組んでいくのか質疑を行いました。

 

 今、構造改革等も含めた社会保障制度の改革が求められます。


Ⅱ 後期高齢者医療保険とは

 

1.制度について

 

 平成20年4月から老人保健制度が改められ、後期高齢者医療制度が始まりました。

 75歳以上の方と一定の障害があると認定された65歳以上の方は、後期高齢者医療制度に加入し、医療給付等を受ける制度となります。その仕組みは右図の通りとなります。

 

 運営においては、都道府県ごとに、全ての市町村が加入する「後期高齢者医療広域連合」が、後期高齢者医療事務(被保険者の資格認定・管理、被保険者証の交付、保険料の賦課、医療給付等)を行います。

 市町村では、保険料の徴収と窓口業務(届出・申請受付等)を行います。

右図(大阪府後期高齢者医療広域連合HP

 

 

左図(大阪府後期高齢者医療広域連合HP

 

 財源については、患者負担を除き、公費(約5割)、現役世代からの支援金(約4割)のほか、高齢者からの保険料(約1割)によって賄われます。

 なお、令和6年度からこの現役世代からの支援金と高齢者の保険料の割合が変更され、現役世代の負担上昇を抑えるとしています。

 

 

2.増え続ける保険料の問題

● 増え続ける保険料

 

 左グラフは大阪府の後期高齢者医療制度の保険料の一人あたりの年平均の推移となります。

 

 制度が開始された第1期・2008~2009年の年平均保険料は76,833円です。それが第9期・2024~2025年では年平均保険料95,666円となり、16年で18,833円の増額となっています。

 保険料はほぼ右肩上がりです。

(大阪府後期高齢者広域連合議会資料より)

 

 

● 増え続ける現役世代の支援金

【厚労省資料 医療保険制度改革について

 上のグラフは、厚生労働省の資料で、後期高齢者1人当たりの保険料と現役1人当たり支援金(月額)の推移です。現役世代の1人当たりの支援金は、平成20年・2008年は月額2,980円のところ令和4年・2022年は月額5,456円となっています。その伸び率は約1.8倍と大きな負担増となっています。(単純に×12カ月の年換算にすると2022年は65,472円となります)

 

 

● 増え続ける医療費

 

 左表は、大阪府後期高齢者広域連合議会の資料で、都道府県別の年度の1人当たりの医療費の状況です。

 

 令和3年度で最も高いのは福岡県の約117万円、大阪府は9番目の約106万円、そして最も低いのが新潟県の約75万円で、大阪府と新潟県では一人当たりの医療費の差が31万円と非常に大きな開きがあります。

 

 また、一人あたりの医療費は大阪府では、令和2年度 104万3千円、令和3年度 106万3千円、令和4年度 108万8千円と僅か3年のうちに4万5千円の増加となっています。

 

 この医療費の増加が保険料の増加の大きな要因となっています。

  

 

 社会保険料はその制度を維持するために、その費用を計算する書式があり、医療給付費が増加すれば、計算に基づきほぼほぼ自動的に増加していく仕組みとなっています。

 右図は、大阪府後期高齢者広域連合議会の資料で、第8期(2021~2023年)から第9期(2024年~2026年)へ移行する保険料率の試算イメージです。第8期分に出産育児一時金(600円)や一人あたりの医療給付費増(1,400円)等が加算されたものが第9期の保険料となります。

 上の左写真は大阪府後期高齢者広域連合の医療給付費の年度比較とその内訳です。右の写真は同連合の第2期データヘルス計画の評価の一部です。いすれも大阪府後期高齢者広域連合議会の資料となります。

 

 大阪府後期高齢者広域連合としても保険料の抑制のために、医療給付費等の抑制の取組みを行っています。その一例がデータヘルス計画評価です。

 

 ただその努力も、保険料が増加し続けていることを踏まえて、現抑制手法に限界があるというのが現実です。

 

 

 

 

3.摂津市の資料について

 ①老齢基礎年金の状況

 上の表並びにグラフは摂津市の資料引用です。

 ご覧の通り、老齢基礎年金は2008年の66,008円から2022年は64,816円と減額している状況です。

 

 

 ②国民健康保険から後期高齢者医療制度への支援金について

 上の表は摂津市の資料引用です。

 国民健康保険での現役世代の支援の示すものです。現役世代の国民健康保険料のうち2割以上が後期高齢者医療制度の支援となっています。

 

 

 また、厚労省資料【厚労省資料 医療保険制度改革についてでは、

 

「○ 健保組合の経常収入は約8.4兆円、経常支出は約8.5兆円であり、そのうち約4.2兆円(約5割)が保険給付費に、約3.7兆円(約4割)が高齢者医療への拠出金に充てられている。(令和3年度決算)」

 

 「○ 協会けんぽ全体の収支は約11兆円だが、その約3.4割、約3.7兆円が高齢者医療への拠出金に充てられている。(令和3年度決算)」

 という相当な費用が現役世代の負担となっています。


Ⅲ 大阪府後期高齢者医療広域連合議会について

 

 大阪府後期高齢者医療広域連合議会は、広域連合の予算や条例などの審議・決定を行う機関です。議会は府内の市町村議会議員から選ばれた議員で構成されます。

議員定数は20人です。

 

 実際の運用では各市町村の持ち回りで、順番に各議会で1名ずつ選ばれます。令和5年度は摂津市議会にもその順番が回ってきました。

 私は摂津市議会で当時、国民健康保険を担当する民生常任委員会所属で関連することから選ばれ、令和5年7月から約1年間、後期高齢者医療広域連合議会議員として任期を務めました。勿論、この間、摂津市議会議員を辞めるわけではないので兼任ということになります。

 

 

 この後期高齢者医療広域連合議会において、3回の議会に参加しました。

 

 1回目は、令和5年第2回議会・7月臨時会(令和5年7月25日)

 2回目は、令和5年第3回議会・11月定例会(令和5年11月17日)

 3回目は、令和6年第1回議会・2月定例会(令和6年2月14日 )です。

 

1回目は主な議題は、連合長や連合の役員等の選出です。また議会の議長等の選任も行います。

 

2回目は連合一般会計・後期高齢者医療特別会計の決算認定です。

 

3回目は補正予算と予算の審議とそれに関わる条例の一部改正等の審議となります。左写真は3回目の議事日程等の資料を写したものです。

 

議会では提出された議案についての質疑や自由に質問できる一般質問が可能です。私はそこで幾つかの質疑を行いました。詳細は下に記載しています。


Ⅳ 高齢者医療に係る状況について

 

 後期高齢者医療に係る議論を行うためには、一面から述べられるような単純なものではなく、様々な事象・制度等が複雑に絡み合っていることをまずもって理解することが必要です。

 そこで私が議会質疑において参考にした記事等の一部をご紹介します。

 

 

1.社会保険料に係る記事等について

 

次は防衛増税?現役世代はもう限界…!今すぐ医療費「3割」引き上げを実現すべき理由-公平な費用負担で5.5兆円の削減に‐

週刊現代 2023.02.02

中田 智之/歯学博士・医療行政ライター

 現役世代に重くのしかかる社会保障費を軽減するために、医療は7割引(3割が本人負担)を上限にして全国民公平としようという提案は、以前から繰り返されてきました。(略)

 さて執筆時点で最新版となる2020年度 国民医療費の概況によると、公費負担と本人負担の合算である国民医療費は75才以上で16.7兆円。医療費総額が42.9兆円なので、75才以上が全医療費のうち約4割占めているということになります。これは65才未満の総医療費を上回ります。

 

 

 

 政府は10日、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度の見直しを盛り込んだ健康保険法などの改正案を閣議決定した。年収153万円を超える約4割の75歳以上の保険料を上げ、膨らむ医療費現役世代と公平にまかなう仕組みを入れる。現役の負担抑制につなげる狙いだが、少子高齢化や人口減が進むなか、さらなる見直しは避けられない。(略)

 医療費の負担を巡り、現役世代に負担が偏っている点が問題視されてきた。後期高齢者医療制度は75歳以上の1人あたり保険料が制度創設の2008年度から2割増えたのに対し、現役世代からの支援金は7割も増えている

 

 

 

 こども家庭庁は11日午後、岸田首相の看板政策「次元の異なる少子化対策」の財源確保に向け、新たに創設する「支援金制度」の素案を有識者会議に示した。企業や個人が支払う公的医療保険に上乗せして支援金を徴収し、2026年度から実施する方針を明記した。国民1人あたりの負担額は月500円程度と見込む。来年の通常国会で関連法案の成立を目指す。

 

 

 

 

2.医療に係る記事等について

 「診療報酬の改定」が話題になっている。医師の森田洋之さんは「医師は医療の量を自分で決められる上、必要以上の医療でも健康保険で支払われる。こうしたモラルハザードが医療を儲けさせている。『医師の儲けすぎ』は改善するべきだ」という――。(略)

 あまり知られていないが、「日本は人口あたりの病床数も、病院受診数も世界トップ」である。日本人は人口あたり、アメリカ人の5倍入院し、3倍外来受診しているのだ。

 

 

 

財政破綻、病院消滅の夕張で老人が元気な理由-心疾患と肺炎の死亡率が大きく低下-

PRESIDENT Online 2019.12.16

 森田 洋之医師/南日本ヘルスリサーチラボ代表

 毎年受ける健康診断に、意味はあるのだろうか。本当に医者のいうことを信じていいのだろうか。さてあなたは、財政破綻した夕張では市から病院が消えたのに、高齢者が元気になっていたことを知っているだろうか。「プレジデント」(2020年1月3日号)の特集「信じてはいけない! 健康診断」より、記事の一部をお届けします――。(略)

 北海道夕張市では171床あった病床は2006年の財政破綻後、19床に大幅減。総合病院は消え、市にはいくつかの診療所が存在するのみとなった。住民の約半分が高齢者で、その分医療を必要とする人が多かった当時の夕張。多くの患者があぶれ、適切な医療を受けることができなくなると予想された。しかし、実際はまったく逆の現象が起こったという。

 

 

 

 

3.可処分所得(手取り)に係る記事等について

衝撃的な試算結果がある。私たちの額面年収がずっと同じだったとしても、実際に使える「手取り収入は激減しているという残酷な数字だ。

 

 下図(左図)を見てほしい。これは、額面年収700万円の人における21年間の手取りを試算し、その推移をグラフ化したものだ。給与や退職金、年金に関する手取りの試算をライフワークとしている、ファイナンシャルプランナー(FP)の深田晶恵氏が試算した。

 

 このグラフを見ると、額面年収はずっと同じ700万円なのに、手取りは2002年に587万円あったものが、23年には536万円へ激減していることが分かる。

 

 21年間で実に51万円も手取りが減少してしまっているのだ。(略)

 

 一方、手取りが激減してきたのは現役世代だけではない。年金世代も事情は同じなのだ。

 

 下図(右図)を見てほしい。年金収入300万円の人における手取りの推移を示したものだ。現役世代と同じく、前出の深田氏が試算してくれた。

 

 これを見ると、年金世代の場合も24年間で37万円も手取りが減ってしまっていることが分かる。99年に290万円だったものが23年には253万円なので、1割以上も減っている計算だ。

 

 グラフを見ると、社会保険料で差し引かれる金額が激増していることが分かる。(略)

 

 

 

 個人や世帯の収入のうち、自らの裁量で自由に使える「可処分所得」。生活水準の向上や日本経済の活性化にも大きな影響を及ぼすだが、日本では企業の給与水準は低迷しており、可処分所得もほとんど増えていない。(略)

 企業の給与水準が低迷しており、可処分所得の増加とはほど遠い状態にある。それどころか、若者世代を中心に貧困世帯も増えている。(略)

 日本では「子供」の貧困も少なくない。(略)12年時点で3人家族の場合、日本の貧困線は約210万円で、子供の貧困率は16.3%だった。およそ300万人超の子供たちが貧困世帯で暮らしていることになる。そして20年に発表された最新データでは、18年の貧困線は127万円、子どもの貧困率は13.5%となっている。(略)

 

 

 

あくまで挙げたのは一例ですが、これらの記事等を踏まえ考えたことは、

 

、、、、、この国は貧しくなっている。一部を除いて。

 

そう思うところです。最近のGDPが世界4位になったというニュースもそれを示すものです。

 

 まさに経済政策の失敗ではないでしょうか。その原因等は割愛しますが、給与が上がらない状態で、後期高齢者医療制度等での後期高齢者や現役世代も含め社会保険料の増額という実質的な増税が続いています。

 

そして手取り減少は、少子高齢化の要因の一つとなるのではないでしょうか。

 

所得が増えない限り社会保険料の増加は、手取りを圧迫します。よってその増加は抑えなければなりません。

 

特に社会保険料増加の要因となる医療費の抑制は必須です。


Ⅴ 議会議事録

 

令和6年第1回大阪府後期高齢者医療広域連合議会

2月定例会での質疑(2024年2月14日) 

議事録(仮)

 

【概要】

 令和6・7年度の後期高齢者医療制度での保険料が1人あたり年平均8,002円も増加します。その要因について確認するとともに、保険料の増加の主たる要因となっている医療費の抑制をどう取り組んでいくのか質疑を行いました。

 

 

〇議長 

 松本議員

 

〇松本議員

 議案第4号(令和6年度大阪府後期高齢者医療広域連合後期高齢者医療特別会計予算の件)について、

 (1 令和6年度特別会計当初予算における保険給付費の増の要因について)

 令和6年度の特別会計当初予算では保険給付費の総額は1兆3690億3826万7千円と令和5年度の当初予算と比較して約578億円増加しています。

 その内訳と要因について答弁を求めます。

 

 次に議案第5号(大阪府後期高齢者医療広域連合後期高齢者医療に関する条例の一部を改正する条例の件)について、

(2 第9期保険料率について)

 第9期保険料率について、第8期と比較して一人あたりの保険料が年8,002円増加したとのことですが、国において医療保険制度改革に伴う改正や医療給付費の増加など、様々な要因があったと聞いています。

 この一人当たり保険料の増加についての内訳とその要因について答弁を求めます。

 

〇議長 

 (理事者)

 

 〇理事者側答弁

【給付課長】

 保険給付費が約578億円増加した内訳ですが、一人当たり医療費の増加によるものが約109億円、被保険者数の増加によるものが約468億円、その他の要因によるものが約1億円でございます。

 

【資格管理課長】

 保険料として賦課すべき額は、医療給付費や保健事業費などの経費総額のうち、約1割相当であり、その他は、国や大阪府、市町村、現役世代からの支援金で賄われております。

 このため、一般的には、保険料が増加する大きな原因は、経費総額の大半を占める医療給付費の増加です。

 また、保険料の負担は約1割と申し上げましたが、現役世代と高齢者世代の人口比率の変化に対して、国は高齢者が負担する比率、すなわち高齢者負担率を算定時に毎回少しずつ変更していることも増加の原因となっています。

 従来はこれらの要素により、減少した時もあったものの、大枠では徐々に保険料が上昇する傾向を示してきました。

 今回の第9期保険料率改定にあたっては、これらに加え国において医療保険制度改革が実施されたことにより大きな変更が2点ございました。

 1点目は、子育てを全世代で支援するために、出産育児一時金に係る費用の一部を支援する仕組みが導入されました。

 2点目は、現役世代の負担上昇を抑制するために、従来の人口比の変化による高齢者負担率の増加に加え、高齢者世代の保険料と現役世代の支援金の伸びが同じようになるようにさらなる見直しが行われたところです。

 これらを踏まえて、一人あたり平均保険料が現在の保険料と比べ約8千円の増加となった要因をご説明いたします。この約8千円増のうち、制度改正に伴う増加としては、出産育児支援金による影響が約6百円、高齢者負担率のうち制度改正による影響分として約3千4百円、その合計約4千円となり、増加幅の約5割になっております。

 また、制度改正以外の影響として、従来からの高齢者負担率の増加分として約4千円、一人あたり医療給付費の増加分として約1千4百円、その他保険料収納率が低下したことによる影響分などが約300円となっており、その合計は5千7百円となっております。

 これらの増加要因による総計は、9千7百円となっております。一方、総所得や政令軽減者の増加などの影響による減少分は合計1千7百円です。それらを差し引きした結果、約8千円の増加となっているところです。

 

〇議長

 松本議員  

 

〇松本議員

(1 保険給付費増加に対する医療費の適正化について)

 保険給付費の増加要因については理解しました。併せて、第9期保険料改定において、第8期と比較した一人あたりの保険料の増加分8,002円のうち、約1,400円が一人あたり医療給付費の増加によるものであるとの答弁です。

 つまり保険料を算定する際に保険給付費の見込みが一定影響を及ぼすと言えることから、被保険者の更なる保険料負担を抑制する為には、医療費の適正化が特に重要だと考えます。

 昨年の決算の時にお聞きしましたが、一人あたりの医療費は令和2年度 104万3千円、令和3年度 106万3千円、令和4年度 108万8千円と僅か3年のうちに4万5千円の増加となっています。止まる事の無い医療費には対策が必要です。そしてこの問題は被保険者だけの課題ではありません。

 保険給付費など経費全体の約4割を負担する現役世代も考慮する必要があります。少子高齢化は晩婚化や核家族化、未婚者の増加、価値観の変容といった様々な要因がありますが、その一つには経済的困窮も挙げられます。実際、経済的な理由により子どもの生む人数を3人ではなく2人しておこうとか2人はしんどいから1人にしておく。そういった市民の声をお聞きしています。

 社会保障費の増加と給与所得が増えない中で、相対的に可処分所得が減っている現状があり、この問題が全世代の経済的困窮につながっているものと危惧しております。

 社会全体の負担軽減のためにも保険給付費の抑制は必須と考えます。改めて医療費適正化に対する広域連合の見解を問います。

 

(2 保険料率の今後の推移、見通しについての見解を問う。)

 次に、第9期の保険料率が上昇した理由は理解しました。保険料の増加は被保険者にとっても大きな負担となります。例えば、摂津市の国民年金の担当部署に確認したところ40年間収めた方の老齢基礎年金の受給額推移として、平成20年で月額66,008円、令和4年度は64,816円と14年間で1,192円の減少となっています。所得が増えない中で社会保険料だけが増加していく。その中で約8千円の増加は決して少なくない負担です。

 また現在、国会で議論されている「こども・子育て支援金」の拠出も26年度から検討される等、保険料は更に増加することが予想されます。保険料が高くなれば、未収納も増え、特に年金暮らしの方への負担が増大し、家計を圧迫し支出は抑制され社会全体がさらに貧しくなっていくのではと危惧します。

 改めて、理事者側は今後も少子高齢化が進展する中で、今後の保険料率はどのように推移すると考えているか、その見通しを伺います。

 

〇議長

(理事者)  

 

〇理事者側答弁 

【給付課長】

 医療費の適正化についてお答えします。

 後期高齢者の増加や医療の高度化に伴い、大阪府後期高齢者医療の保険給付費は依然高い水準にあり、このような状況の中、後期高齢者医療の財政を安定的に運営していくためには、医療費適正化を推進することが極めて重要であると認識しております。

 医療費適正化を目的として実施している主な施策ですが(1)医療費通知の送付、(2)診療報酬明細書の資格点検・内容点検、(3)ジェネリック医薬品の利用促進、(4)重複・頻回受診者に対する保健師による健康相談、(5)交通事故等第三者求償事務の促進、(6)柔道整復・はり・きゅう・マッサージに関する被保険者照会等を実施しています。

 また、健康診査、歯科健康診査等によって疾病の早期発見・早期治療し予防に努めることで健康寿命を延ばし医療費の抑制を図っております。

 これらの取組みなどによって、毎年増加する保険給付費の伸びを、できる限り抑えることにより、後期高齢者医療制度の財政の安定的運営に努めています。

 

【資格管理課長】

 繰り返しになりますが、保険料が増加する大きな原因は、経費総額の大半を占める医療給付費の増加であり、その指標となるのは一人あたり医療費の推移です。制度改正、診療報酬の改定のほか、被保険者一人ひとりが医療機関等を受診した結果により大きく変化します。今後も医療の高度化や高額化が見込まれることを踏まえると、被保険者の皆様がこれまでと同様の受診傾向である場合には保険料率の増加があり得ますが、今の時点で今後の保険料率の動きを推測することは難しいところです。

 また、国が決める保険料算出に係る基準の値も保険料率を大きく左右します。今回の制度改正による影響による出産育児支援金の負担については、今回の保険料率では激変緩和措置として本来の2分の1の負担分とされていますが、次回の第10期においてはこの激変緩和措置がなくなり、本来の負担分となります。今回、最も影響が大きかった高齢者負担率は若年者との負担の均衡を図る観点から国が人口比をもとに改定していることから、今後も高齢化が進めばその率は上昇すると考えられます。その他保険料算定に係る基礎数値は国が全国的な状況を踏まえ決定することから、当広域連合が独自で予測することは困難です。

 これらのことから、今後の保険料率については、現時点で増加の要因がある一方、被保険者の受診傾向等も含めて予測することは非常に困難ですが、当広域連合としては、医療費の適正化や剰余金の活用などにより、引き続き、保険料の増加抑制に努めてまいります。

 

〇議長

 松本議員 

 

〇松本議員

(1 保険給付費増加に対する医療費の適正化について)

 保険給付費増加抑制の取組みについては理解しました。努力を積み重ねられていることは評価致します。引き続きの努力を要望致します。

 ただ結果として一人当たりの医療費は増加し続け、第9期で約8千円の保険料増加となっていることは現状の抑制手法に限界があるのではないでしょうか。

 現状の手法に限界が見えている中で、当該制度の将来的な破綻を防ぎかつ安定的な運営に必要な医療費抑制のために、過剰医療の抑制など医療分野でのソフト・ハードの改革も含めた社会保障体制の抜本的な改革を検討すべき段階になっているのではないかと考えます。

 例えば一部の医療関係者が指摘する歯止めなき延命医療医療の大半を占める慢性期医療の見直し等が挙げられ、また公平かつ必要性の少ない受診を抑制する観点などから全年齢で3割負担すべきという声もあります。待ったなし、聖域無しで議論し見直しをせざるを得ない時期になっているものと考えます。

 要望について最後にまとめて述べます。

(2 保険料率の今後の推移、見通しについての見解を問う。)

  保険料率の今後の見通しですが、増加する可能性はあるものの推測は難しいとのことですが、私はこれまでの推移と増加要因を見れば、増加し続けるものと考えます

 2008年の本制度が開始された時は一人あたりの平均保険料は76,833円だったのが、この16年で18,833円の増加となっています。

 被保険者の負担増はその生活に大きな影響を及ぼします。所得が増えないままに保険料のみが増え、生活を圧迫していく、という状況が悪化しています。

 当然のこと被保険者の負担だけではありません。後期高齢者医療の約4割を負担する現役世代へも影響を及ぼします。制度創設時と比べ、現役世代の支援金の負担増加は1.7倍と高齢者の保険料の伸び1.2倍と比較しても大きくなっています。例えば人口約8万5千人の摂津市の令和5年保険料総額17億5139万円のうち22.2%の3億8832万円が後期分です。また厚生労働省の資料によると、現役世代一人あたり支援金はH20年 月額2,980円、年額35,760円、それがR4年は月額5,456円、年額65,472円となっています。この伸び率を政府は修正するための負担割合見直しを今回行っていますが、今後も増えていくことが予想されます。

 現役世代は後期高齢者の分だけでなく、自身の保険料も当然払っており、繰り返しにはなりますが可処分所得、いわゆる手取りがどんどん減っていき少子化を加速させるものと懸念します。

 加えて、最近政府が発表した「こども・子育て支援金」の拠出での負担が予想されます。社会保険料の目的外使用と指摘されるような批判多き施策です。このように制度の安定維持には懸念山積となっている状況です。

 

 本議案に反対するものではありませんが、将来において、制度維持の為にどうあるべきか。国民の生活を維持するためにどうあるべきか。1年2年の短期でなく10年30年の長期的な見通しを持つ必要があろうかと思います。そのうえで制度の維持において必要な施策を訴え、あるいは不適切な政策云々が上がれば声を上げて是正を求めていかなかなければなりません。議会と理事者が連携して困難な時代を乗り越えていけるよう取り組むことを要望して質問を終わります。

 

※当議事録は資料等から作成。

 正式な議事録は大阪府後期高齢者広域連合HPにUP予定

2024.2.20現在

 

 


Ⅵ まとめ

 

 後期高齢者の保険料は増え続けています。

 

 そしてそれを支援する現役世代の負担金も増え続けます。現役世代は後期高齢者の分だけでなく、自身の保険料も当然払っており、繰り返しにはなりますが可処分所得、いわゆる手取りがどんどん減っていき少子化を加速させるものと懸念しています。

 

 増加し続ける保険料、その要因となる医療費の増加を抑制するための現状の手法は、限界が見えています。

 広域連合議会にて、増加する保険料に反対したとて、それでは現制度が維持できなくなり、被保険者が困るだけです。制度並びに医療分野での業界等の仕組みそのものを改革していかなければ、増加する保険料に歯止めはかけれません。

 

 社会保険制度の破綻を防ぎかつ安定的な運営に必要な医療費抑制のため、過剰医療の抑制など医療分野でのソフト・ハードの改革も含めた社会保障体制の抜本的な改革を検討すべき段階になっているのではないかと考えます。

 

 例えば一部の医療関係者が指摘する歯止めなき延命医療医療の大半を占める慢性期医療の見直し等が挙げられ、また公平かつ必要性の少ない受診を抑制する観点などから全年齢で3割負担すべきという声もあります。

 

 待ったなし、聖域無しで議論し見直しをせざるを得ない時期になっています。

 

 

 


Ⅶ 関連資料・リンク


 政府内で、月内に策定する社会保障の改革工程表を巡り、75歳以上の人医療機関で支払う窓口負担の原則2割への引き上げを検討すると盛り込む案があることが分かった。児童手当の拡充など少子化対策の財源に充てたい考え。複数の関係者が2日、明らかにした。現在は多くの人が窓口負担1割のため、負担増となる政策が岸田政権に打撃となる可能性があり、調整は難航しそうだ。

 

 

  加藤鮎子こども政策担当大臣は、少子化対策の支援金の徴収額について月1000円を超える可能性があると答弁しました。当初500円弱とされた一人あたりの負担が半月あまりで倍増しています。(略)

 児童手当や育休取得の促進などに充てるため、医療保険料に上乗せする形で1兆円を国民から徴収するというものです。

 加藤大臣が“1000円を超える”可能性に言及したのは、1人あたりの月の負担額に関するものでした。(略)

 夫婦の場合、年間の負担2万4000円を上回る可能性が出てきます。