Ⅰ はじめに

令和の米不足についてですが、不作でもないのにお米が無いのは何故か。疑問に思われませんか??
とても不思議でしたので、統計を調べてみました。
右表は商業用米輸出実績と主食用米生産量の推移を示したものです。2014年と比較し2024年ではお米の海外輸出は10倍増と大幅に増加し、逆に生産量は109万トン減少という状況です。
主食用米生産量は減少し続け、それにもかかわらず海外輸出は増加、その結果、需要を満たすことが出来なくなった。そのような状況が見えてきました。
簡潔に言うと、今回の米不足はひとえにこれまでの農業政策の結果であり、失政による人災ではないでしょうか。
Ⅱ 統計でみる
1.供給量(生産量)


農林水産省の「米をめぐる状況について」から主食用米生産量(万トン)の状況を確認しました。それが上記表です。
毎年生産量は減少しており、例えば、平成26年(2014年)では788万トンのところ令和6年(2024年)では679万トンと、たった11年で109万トンも減少しています。
また同じく農林水産省の「米の輸出をめぐる状況について」から商業用米の輸出実績の状況を確認しました。それが左記表です。
2014年では4,516トンのところ2024年では45,112トンと、11年で10倍という大幅な増加となっています。

上記内容を一つの表にまとめたのが左記表になります。
2.需要量(消費)

同じく農林水産省の「米をめぐる状況について」P6から需要量の状況を確認しました。
需給見通しの上写真の中で、右上表の「主食用米の需要量の推移」を見ると、R3/4年で702万トン、R5/6年で705万トンとなっています。左写真はそれを拡大したものです。
そして上写真の左側2つの表は「需給見通し」ですが、R6/7年の主食用米等需要量は674万トンと記載されています。この見通しは、「主食用米の需要量の推移」に記載の実際の需要量(R5/6年で705万トン)と大きく乖離しているのではないかと思うところです。
3.需要と供給のバランスが崩れているのでは?
単純に上記資料だけを読み取ると、R3年度以降、主食用米生産量が需要量を下回っています。
そして国民が国産米を食べられないにもかかわらずにも海外輸出は増え続けています。矛盾した状況が生起しています。
令和のコメ不足について、買占めや転売屋、流通の問題等々をマスコミ等は取り上げていますが、そもそもは生産量が実際の需要量を下回ってきたことが最大の問題ではないのでしょうか。
4.関連記事
(略)「本丸は生産の問題です」と加藤氏は強調する。長年続けられてきた「減反政策」が現在の問題を引き起こしている根本原因だという。
減反政策とは、コメが余ると価格が下がるため、田んぼの面積を減らして生産量を調整し、減らした面積や他の作物への転作に応じて補助金を出す国の政策だ。「長年、米を減らすことにお金をかけてきた」と加藤氏は表現。(略)
Ⅲ 減反政策等について・関連記事より

日本経済新聞 2025.3.20
▼減反政策 国がコメの過剰生産を抑えて価格の下落を防ぐ政策(略)
コメを統制していた食糧管理法が1995年に廃止された後、減反は米価を維持する手段へと変わった。(略)
安倍政権下の2018年に都道府県ごとの生産目標量を示すのをやめた(略)ただ、農林水産省はいまも需要予測に基づく生産量目安を示すほか、主食用米から麦や大豆に転作する農家へ補助金を出している。作りすぎによる値崩れを避けたい農業団体などは、この需給見通しをもとに生産量を調整しており、事実上の減反は続いている。
⇒コメ不足の最大の原因は過剰な減反であり、農政の失策と言えるのではないでしょうか。
加えて、政府の「需給見通し」が実態と乖離しているのではないでしょうか?過小評価での需給見通しで生産量も減少する。
更に付け加えて海外輸出の増加です。
見事に重なった失政によってコメ不足が引き起こされているのではないか、と改めて思うところです。
NHK 2025.6.17
コメの価格高騰が続く中、関税をかけずに義務的に輸入する「ミニマムアクセス」の枠外で、高い関税がかかるコメの輸入量が拡大しています。
ことし4月には6800トン余りと、1か月間で昨年度1年間の2倍を超えました。
日本は、年間およそ77万トンのコメを「ミニマムアクセス」※として関税をかけずに義務的に輸入し、この枠外では1キロ当たり341円の高い関税がかかっています。(略)
ミニマムアクセスの枠外での輸入量の拡大は、コメの価格高騰を背景に高い関税がかかっても採算が見込めると商社などの業者が判断したためとみられます。(略)
⇒コメ不足によってコメの価格は高騰し、外国からのコメ輸入量が増加している。
失政によって国民は適切に為されていれば不要である負担を強いられ、かつ外国産米を食べさせられている。
そんな状況が見えてきました。

※ミニマムアクセス
○国家貿易によって輸入したMA米は、価格等の面で国産米では十分に対応し難い用途(主として加 工食品の原料用)を中心に販売。
○一方で、MA米に対する加工用等の需要は限られるため、飼料用にも販売する他、海外への食糧援助に活用。
引用:農林水産省の「米をめぐる状況について」P164
〇コメ農家が離農懸念「じゃぶじゃぶになると暴落する」小泉農水相9月の輸入米前倒し発言で…農水省データと実態のズレを認める
Yahooニュース めざましメディア 2025.6.16
(略)コメ農家 多田正吾さん:
備蓄米も、輸入米もどんどん入る、日本国内でも食用米が全国的に多いとなると、先が見えている感じがします。“じゃぶじゃぶ”になる。
9月は日本全国米が収穫できる時期だから、収穫状況を確認してからでも遅くはないと思うんですよね。ダブついてしまったら大暴落で、生産者は本当に困ると思います。
9月にどれくらい取れるかっていうのをちょっと調査してから輸入してもらわないと、最悪の事態が起きてしまうんじゃないかと。離農する人が多くなって、後継者もできない…。(略)
米流通評論家 常本泰志氏:
例えば、コロナ禍以降で家庭内のコメの消費量というのは増えています。プラス、外国人労働者やインバウンドなどで、需要量の誤差が出てきている可能性が高いと思います。
――現在の見通しは甘すぎる?
(略)結局こういった形で「足りない」ということが発生したということは、需要量が上がっている可能性が高いかと。(略)
⇒離農者の可能性が指摘され、また政府の見通しが不適当であることも指摘されています。
政府はコメの政策並びにコメ農家を大切にしていないのではないかと懸念するものです。
Ⅳ まとめ

令和のコメ不足は失政による人災。
その一言に尽きるのではないでしょうか。
政府はこの国の食料安全保障をなんと考えているのでしょうか??
これまで、ただでさえ食糧自給率が世界と比して低い日本においてもお米は国産で食べることができていた。
それができなくなっている。
失策によりコメ価格は高騰し、国民の負担を増大させている上に、国民に輸入米を食べるように誘導することは、国民の国産米離れを促し、更なる国産米の衰退を招くだけです。あまりにも杜撰といいますか、日本の農業、お米を守るどころが衰退させている、そうした政策を政府は行っている、そう思わざるを得ないです。

お米は日本人の骨幹ではないでしょうか。
気は「氣」とも言います。
戦前では後者が常用漢字でした。
日本人にとって欠かす事のできないお米、その生産は大切にしなければなりません。
大学にて農業の大切さを学び、自衛隊在籍時には国家安全保障上での食糧確保の重要性を学んでいます。
不作でもなく、有事でもない。それにもかかわらず起こったコメ不足。歴史を見ればこれは一揆ものです。
政府の統治機能は失われてしまったのでしょうか。
そして某大臣は表面上のことだけを取り繕っている。それだけを報道するマスコミ。
国民を誤魔化している、猛省して根幹から立て直すべき、そう厳しく指摘されるべきでしょうね。
なお、新米が収穫される9月頃には不足は解消される可能性は高いとのことですが、備蓄米や輸入米等々で混乱は続くかもしれません。
Ⅴ 関連リンク
〇 農林水産省 「最近の米をめぐる状況について(令和7年5月)」
〇 農林水産省 「米の輸出について」
〇 キャノングローバル戦略研究所「米価高騰への抜本的な対策は減反廃止と農家への直接支払いの導入」2025年4月9日
〇 キャノングローバル戦略研究所「米価を下げる根本的対策は減反廃止しかない」2025年6月4日