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摂津市の児童虐待防止の強化策について(2022.4)


Ⅰ 概 要

 

 昨年、市内において悲惨な児童虐待死事件が起きました。

 

 この事件を受けて、市は、庁内で対応が適切であったのか検証を行うとともに、逐次、対策を講じてきました。そして私を始めとする議員全員が、議会として市に対策を講じるよう提言してきました。

 

 令和4年1月11日に、庁内の摂津市虐待等防止ネットワーク会議から「児童死亡事案を踏まえた庁内職員検討結果報告書」が担当である次世代育成部長に提出されました。

 そして、大阪府でも検証専門部会から「令和3年度児童死亡事案検証結果報告書(摂津市事案)」が令和4年1月に公表されました。

 

 それらを踏まえて、市は児童虐待防止に向けた取り組みをさらに加速させ、令和4年度は担当部署の予算増で、その取組みが進められようとしています。

 

 これまでの経緯についてはブログ「摂津市の児童虐待対応強化について2021.11.12現在」を参照ください。

 

 


Ⅱ 現況等について

1.通告件数

 家庭児童相談事業の虐待の対応について、令和3年度は令和4年2月末現在で通告件数541件となっており、令和元年度と同月比で高い水準で推移をしています。

(※令和4年第1回定例会文教上下水道常任委員会 2022.3.11)

2.対応要領

  対応要領について、市で虐待通告を受けた場合は、通告内容を確認した上で庁内関係課が持っている世帯の情報を収集し、家庭に潜んでいるリスクを検討した上で対応方針を決定します。

 それで、最終的には保護者への指導も行うこととなります。ただし、このような家庭では経済的な困窮や、また、保護者が精神的な不安定、DVなど様々な課題を抱えている世帯も多くあることから、関係機関と連携し継続した支援が求められます。

(参照:令和4年第1回定例会文教上下水道常任委員会 2022.3.11)

 

 


Ⅲ 令和4年度からの強化施策について

(引用 広報せっつ2022.4.1 No.854)

1.家庭児童相談課の強化

 

①正規職員の増員

 令和3年度当初は正規職員5人(課長1人、他4人)から、昨年11月に増員され、また新たに正規職員で2名増員する予定です。そのため、令和4年度当初は、正規職員8人(課長1人、他7人)となります。

 

②会計年度任用職員の増員 

 現時点では、担当課の会計年度任用職員は、虐待に従事するケースワーカーが2名、発達相談を担当する心理職が4名、虐待通告があった際の初期調査を行う事務嘱託員が1名です。

 そのうえで、令和4年度に新たに雇用するのが(仮称)保育ソーシャルワーカー1名の計8名になります。

  

③(仮称)保育ソーシャルワーカーについて

 (仮称)保育ソーシャルワーカーは、虐待対応の視点を持って、保育所における児童の日常の様子、また、保護者との関わ り、リスク情報などを総合的にとらえて家庭児童相談課のケースワーカーにつなぐといった役割を担います。具体的には、日々巡回で、保育所等の連絡を密に行い、積極的に市のほうから子どもの状況を確認を行うことで、より早期に要保護児童の状況をキャッチしていくというものです。

 そのため、医療、福祉、教育、行政機関の機能などを熟知する社会福祉等の専門職を予定しています。 

 

④スーパーバイザーの配置

 令和3年11月から招聘している臨床心理士と弁護士のスーパーバイザーは、引き続き令和4年度も招聘します。

 スーパーバイザーの役割として、職員の知識レベルだけでは対応が難しい、主に処遇困難ケース助言を受けます。令和4年度の取り組みとして、臨床心理士については、日々入ってくる通告のインテークや初期対応の部分について、市へ助言してもらいます。

 弁護士については、月に1回開催する要保護児童対策地域協議会の新規受理会議にも参加してもらい、また、個別ケース検討会議といった対応が困難なケースの会議についても、市へ助言してもらいます。

 

⑤チーム制の導入 

 人事異動の影響を受けないように、また、複数対応や進行管理を徹底するために、ケースワーカーを8名体制とし、2チーム(各4人・正規職員2名、会計年度任用職員2名)が構成されます。複数職員の視点でアセスメントでき、アセスメント力向上します。

 

 家庭児童相談課の増員により、令和2年度実績で虐待対応件数が449件に対し、職員5名で、職員一人当たりの対応件数は約90件のところ、職員一人当たりの対応件数が約50件となり、一人当たりの対応件数はこれまでより緩和される見込みです。

  そして職員研修等も行って、職員の能力を高めていきます。

 

 

2.大阪府や警察との連携の強化

①要保護児童対策地域協議会の進行見直し

 <1.進行管理会議等の体制見直し>

 会議の参加者について、大阪府の吹田子ども家庭センターからこれまで地区担当だけであったところ、総括担当も参加し、またDV対応も踏まえて市の人権女性政策課も参加することとなった。

 <2.重症度の高いケースから検討へ>

 優先順位を意識した会議運営となります。(重度→中度→軽度の重症度順に協議)

 <3.協議時間の延長>

 より丁寧かつ深い議論を実施します。

 

②警察との連携

 リスクの高い情報や家族状況の大きな変化などに開催するなど個別事例(ケース)検討会議で、市は開催基準を策定するとともに、必要により警察の出席を要請するとのこと。(市から警察へ連携要請中であるとのこと。2月8日の協議会にて)

 

 児童虐待防止には、大阪府や警察との連携強化が必須です。

 

ダウンロード
令和3年度児童死亡事案検証結果報告書(摂津市事案).pdf
PDFファイル 447.8 KB

3.庁内・地域ネットワークの強化

 市の各部署についても児童虐待の関係機関と対応することが求められます。

 

 次世代育成部の出産育児課では、保健師等にはスーパーバイザーの助言を受けながら、個々の努力、そして、対応を積み上げています。

 また、外部の見守り機関では、保育所を中心として小学校中学校等の見守り機関との連携の仕方、コミュニケーションの仕方、一つ一つ丁寧に積み上げていく必要があります。

 また、人権女性政策課について、家庭児童相談課が行っている毎月の新規受理会議や、全件棚卸の進行管理会議に、要保護児童対策地域協議会の構成メンバーとして現在参加しています。加えて、DVと児童虐待に関しては、対のものと言え、同時に起こっているケースも多々あり、そこの連携は必要であると認識し、虐待ネットワークシステムにも入力をし、随時庁内での情報共有を行っています。 

(参照:令和4年2月8日・文教上下水道常任委員会協議会資料)

令和4年第1回定例会文教上下水道常任委員会 2022.3.11)

総務建設常任委員会 2022.3.16)

 


Ⅳ 議事録

 

 令和4年第1回定例会での代表質問において、児童虐待防止に必要な孤立家庭防止の取り組みについて確認するとともに、児童虐待防止の職員の能力強化等について議論を行いました。

令和4年第1回定例会代表質問 ~本会議2日目 2022年3月7日~

議事録(抜粋)

 

4-1 児童虐待防止について

 

○松本議員

 4-1児童虐待防止について、虐待防止は喫緊の課題です。悲惨な事件を二度と繰り返すことの無いよう再発防止策が求められます。

 会派として地域共育、地域で共に育てること、即ち、虐待の要因となる孤立家庭を地域ネットワークで防ぎ、かつ適切な子育て支援を行うことで、児童虐待防止を図るよう提言して参りました。

 改めて、地域共育の観点から、令和4年度の取り組みについてお聞かせ下さい。

(略※)

 

○森山一正市長

 児童虐待防止に向けた現在の取り組みについてでありますが、児童虐待は多くの場合、経済的・精神的な不安、地域からの孤立、家庭の不安等、様々な要因が重なったときに引き起こされます。孤立した子育て家庭をなくす事は、児童虐待を防止するために大変重要であると認識しております。

 母子保健福祉施策におきまして妊娠届出時に妊婦全数面接を実施するとともに、保健師が妊婦の悩みに丁寧に対応しながらアセスメントを実施し、家族や地域での支援者の有無の把握に努め、子育てサークル紹介やつどいの広場の利用を促すなど、妊産婦の孤立防止に努めているところでございます。

 今後、要保護児童対策地域協議会の様々な機関や地域と連携し、保護者の孤立をなくし、虐待の未然防止に努めて参ります。

(略※)

 

○松本議員

 4-1児童虐待防止について、令和4年度の取り組みは理解しました。

 そのうえで、検証報告書などで課題とされた虐待を見抜く力虐待への対応力、そして子育てをサポートする力、これらをどう向上させるのかお聞かせ下さい。

(略※)

 

○次世代育成部長

 児童虐待予防や対応能力の向上についてお答えいたします。

 二度と悲しい事案を繰り返さないため、家庭児童相談課の職員等を対象に怪我の見立てや虐待対応についての研修を実施するほか、外部の専門家のスーパーバイザーによる多角的な視点での家庭へのアセスメントや虐待対応についての助言・指導をいただくことにより、その経験を蓄積し虐待を見抜く力対応力の向上に努めて参ります。

 また、児童虐待対応の経験がある専門職員を増員するとともに、チーム制の導入を予定しております。チームリーダーが牽引役となって、チーム内で培ったノウハウで、チームとして家庭とつながることにより、家庭や子どもにおけるリスクについて常に複数職員の視点でアセスメントを実施することで、アセスメント能力の向上を図って参ります。

 さらには、母子保健の保健師や母子父子自立支援員、就学前施設の保育士等と連携し、様々な専門職の視点を取り入れた支援を実施することで、個々の職員の子育てをサポートする力も磨いて参りたいと考えております。

(略※)

 

○松本議員

 4-1児童虐待防止について、課題克服の取り組みを理解しました。

 様々な力を結集して、子どもを守られるよう、そして地域共育・地域ネットワークを構築して孤立家庭をなくしていく、包括的取組み児童虐待防止をしっかりと取り組まれるよう要望致します。

 

 (以上)

  (音声データ等より作成)

※当該質問に関係のない他の質問項目の部分は省略しています。

 

 


Ⅴ まとめ

 

 児童虐待防止の取り組みは、これまでの検証を踏まえ、着実に強化されています。

 

 これについては高く評価できるものです。

 

 二度と悲惨な事件が起きないよう、その取り組みがしっかりと実行され、機能され、そして不具合があれば、補強する。そういった視点で、議会から引き続き提言して参ります。

 

 


Ⅵ 関連リンク

 

(追記 2022年7月6日)