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摂津市の水害対策など継続性ある防災政策について

Ⅰ 概 要

 本市の安全・安心のまちづくりにおいて、大きな課題となっている淀川・安威川氾濫といった水害対策では、摂津市内だけでは避難所が確保できないことから、広域避難の為に隣接市や大阪府との連携が必要不可欠です。

 また、広域避難が困難な方々もおられる現状も踏まえ、本市独自の取り組みとして「高台まちづくり」を理念に、河川防災ステーションをはじめとした市内での緊急避難場所の確保も検討されています。

 勿論、南海トラフ地震といった地震対策も必要であり、それら災害対策を担う「人づくり」も重要であり、ノウハウの継続性も踏まえ、諸々の防災政策について、2021年6月議会にて議論を行いました。

 

 

Ⅱ 現状について

 本市は千里丘地域を除き、ほぼ河川に面した平野部です。そのため、 淀川氾濫時には市域の8割程度が浸水すると想定されています。

 これにより人口約8万6千人のうち、浸水エリアに居住される約6万8千人の避難先確保が求められます。しかし地震等に対応できる避難所30カ所のうち、浸水リスクがないのは3カ所のみです。

 よって水害時の緊急時に全市民をカバーできず、隣接市等も含めた広域・分散避難が必要となります。

 しかし、自治体またぐ「広域避難」 移動手段や受け入れ調整は難航しています。これは記事にも取り上げられています。

 

自治体またぐ「広域避難」 移動手段や受け入れ調整難航も(1/3ページ) - 産経ニュース (sankei.com)

 また、地震時も含めた避難所運営では多くの職員が割かれることから、復興計画やその実行において遅れが生じることが予想されます。

 その対応のために、地域防災リーダー制度を作り、避難所運営を支援できる人材を育成すべきだということで提唱した「防災サポーター制度」ですが、これがまだまだ、本来の目的を達成するまでに至っていません。

 市が避難所となる施設の開所をお願いできる。そこまでの信頼関係構築並びに必要な識能を付与できるのか、それもまた大きな課題です。

 また、水害時の消防による救助活動とその体制にも課題があります。

 消防は当然ながら、淀川氾濫時には、保有する救難ボートで逃げ遅れた市民の方々を救助しなければなりません。しかし、安威川以南にある味生出張所並びに鳥飼出張所は浸水し、拠点としての機能は発揮できません。

 消防として有効に活動できる拠点が安威川以南に必要なのです。私はそれが河川防災ステーションであると考えています。現状、市は地積上の限界から平時の拠点としては難しいと答えており、それならば少なくとも有事に活動できるよう消防のバックアップ機能は設けるべき提言しています。

 

 

Ⅲ 議会での質疑について

 諸々の現状を踏まえて、今後、どう防災政策を進めるべきか議会で取り上げ、提言することとしました。それが以下の内容となります。


令和3年第2回定例会一般質問 ~本会議2日目 令和3年6月24日~

議事録(抜粋)

 

 

5 水害対策など継続性ある防災政策について

 

○松本議員

 5 水害対策など継続性ある防災政策についてですが、まず、淀川氾濫時において消防としてどのように救助活動を展開するのか、現在、想定している活動内容についてお聞かせ下さい。

 

(略※)

 

○森西議長

 消防長

 

○明原消防長

 淀川氾濫時の救助活動についてのご質問にお答えいたします。

 淀川氾濫による水害につきましては、市地域防災計画による「市の全力を挙げて防災活動を実施する体制」となり、消防活動としては、市災害対策本部体制の中で、各部各班と連携した応急対策を実施することになります。

 全消防職員を参集し、情報収集・伝達活動、消防広報活動、災害警戒活動を実施いたしますが、最優先となりますのは、人命の救出・救助でございます。

 水難救助用ボートを活用し、本市消防が持てるマンパワーを全投入し、浸水建物等からの救出・救助活動に当たりますが、淀川の氾濫でありますと、要救助者が広範囲に相当数おられることが想定でき、絶対的な消防力が不足するため、大阪府下の他市消防や緊急消防援助隊による消防広域応援の要請を行うこととなります。

 活動に際しましては、浸水エリアが非常に広大で、相当の浸水深が想定される状況で、いかに活動拠点を確保するのかという、大きな課題に直面しております。

 

(略※)

 

○松本議員

 次に、水害対策など継続性ある防災政策についてですが、消防の想定で課題がある事を理解しました。課題克服に向けた議論をしっかりと進めるよう要望致します。

 さて、広域避難における避難先確保について、万博記念公園等も含めた隣接市との調整状況についてはどのようなものか、お聞かせください。

 

○森西議長

 総務部理事

 

○辰巳総務部理事

 広域避難につきましては、国土交通省と大阪府が事務局となり、三島地域の各市町及び各機関で構成する「三島地域広域避難検討ワーキンググループ」において検討しているところであります。

 しかし、広域避難に向け検討すべき課題が多岐にわたりますことから、万博記念公園を含めた近隣における広域避難先の確保に向けた具体的な協議にまでは、進めていない状況でございます。

 本市といたしましては、まず市内の広域避難ができないよう要援護者や逃げ遅れた方を想定した高台まちづくりによる避難所の確保を推進してまいりますとともに、引き続きワーキンググループに対しましては、粘り強く広域避難先の確保に向けて協議を進めて参ります。

 

○森西議長

 松本議員。

 

○松本議員

 広域避難においては、各自治体を束ねる大阪府への働き掛けを一層強めることが必要と考えます。高台まちづくりと合わせて、引き続き取り組まれるよう要望致します。

 さて、今、河川防災ステーションも含め鳥飼まちづくりグランドデザインでは市全域を踏まえた防災の議論が行われています。当然ながら淀川氾濫においては鳥飼地域だけでなく別府・一津屋地域も浸水します。安威川氾濫では安威川以北も被害が及びます。

 よって、この防災の議論は、最終的には地域防災計画など市全体の防災政策にも反映されるべきと思いますが、どうお考えかお聞かせください。

 

○森西議長

 総務部理事

 

○辰巳総務部理事

 議員ご指摘の通り、本市は淀川、安威川が氾濫した場合には、市域の大部分が浸水することから、水害対策につきましては鳥飼地域に限らず、浸水想定区域外にあります千里丘地域の活用などを含めて、市域全体で検討を行ってまいりたいと考えております。

 市全体の防災対策につきましては、鳥飼まちづくりグランドデザイン策定委員会で安全安心のまちづくりに資する「高台のまちづくり」の議論を深めているところであり、その検討結果を踏まえまして、地域防災計画の改定を進めて参りたいと考えております。

 

○森西議長

 松本議員。

 

○松本議員

 市域全体の取り組みに反映されるものと理解しました。

 市域全体を俯瞰し、浸水しない千里丘一帯、旧三宅小学校など避難場所としての価値が高い場所を有効活用しつつ、広域避難も含め市域全体で取り組まれるよう要望いたします。

 また水害には内水氾濫もあり、会派で4月に視察した東別府雨水幹線も期待をしております。是非、円滑な完成を要望致します。

 さて、安威川氾濫は100年に一度、淀川氾濫は1000年に一度の大雨と云われるように、防災政策については継続性が求められます。1年や数年で終わる単発的な政策は防災政策には適していません。

 改めて、市として継続性ある防災政策についてどうお考えかお聞かせください。

 

○森西議長

 総務部理事

 

○辰巳総務部理事

 市の防災政策において最も優先すべき事は「命を守る」ことであり、そのためには、ハード面とソフト面の両面からしっかりと取り組んでいく必要があります。

 ソフト面に関しては、市としては、「災害対策本部訓練」や「安否・参集確認訓練」、「実践的な防災訓練」など繰り返し実施してまいりますが、市民一人一人が自らの「命を守る」ためのスキルを身に付けていただくことも重要と考えており、「お願い会員・まかせて会員」など地域に根付いた取り組みを支援しております。

 特に、令和元年度から始まった防災サポーター制度につきましては、防災サポーターの皆様には、地元地域の防災対策の充実を図るためご努力頂いているところでございます。制度発足から3年目を迎えましたところから、市といたしましては、改めて実態を調査し必要に応じて対応策を検討してまいります。また防災サポーターの知識、技能レベルを維持向上するため、最新の情報を提供するための研修を継続して実施するなど、しっかりとサポートして参りたいと考えております。

 

○森西議長

 松本議員。

 

○松本議員

 是非、継続できるよう各施策に取り組むという事で要望致します。

 災害対策本部会議訓練も今年3月に実施されました。実施については強く要望しており評価致します。

 是非とも定期的に行い、ノウハウを継承していくことが必要です。前回は地震対応でしたが、水害対応も行うことが求められます。避難要領、水没地域への救助要領など諸々のシミュレーションを行い、防災政策に反映されるよう要望致します。

 最後に市長として継続性ある防災政策を今後どう進められるのか総括的にお考えをお聞かせ下さい。

 

○森西議長

 市長

 

〇森山市長

 松本議員さんの質問にお答えします。

 いつも言っていますけれども、まちづくりの基本は市民の皆様の安全・安心でございます。今後も、さきほどの答弁にありましたように様々な取り組みをしてまいりましたけれども、今後も市民の皆様の命を守る、そのことを軸足に置いて、またハード・ソフト両面からしっかりとした取り組みをして参りたいと思っています。

 ハード面では、色んな取り組み、今、答弁したと思いますけども、加えまして今後は、「高台のまちづくり」という理念、こういったものを普及といいますか、皆の問題意識の共有を図っていかなければならないなと、そんな思いをいたしております。

 ご指摘がありましたが、具体的には只今、国の防災ステーション、その誘致に取り組んでおるところでございます。まあ、あのこれとて、直ぐにできるものではありませんけども、時間がかかりますけれども、一つのモデルとして、なんとかして、誘致を図っていきたいと思っております。

 また、ご指摘ありましたように、この防災ステーションだけでなく、摂津市にはよくよく考えてみますと千里丘周辺、少し高台が、高くなっている部分がたくさん有るわけでありますが、そういった避難場所をしっかりと点検・確保することをそろそろ考えていかなくてはなりません。

 また今後は、公共施設の建替、再編等に際しましても、先ほど申し上げました高台のまちづくりという理念を頭に置きながら、施設整備等をしっかりと取り組んでいくことになろうかと思います。

 また、ソフト面では、いつも言っていますけれども、やっぱりイロハのイは、「自助」「共助」「公助」のバランスに掛かっていると思います。特に「自助」「共助」、これが如何に機能するか、ここにかかっていると言っても良いと思います。

その事も口では簡単に言えますが、なかなか容易な事ではございません。その要になって頂くのは、ご案内の通り、摂津市にありますサポート防災サポーター制度でございます。この防災サポーター制度をよりですね、充実さしていかなければなりません。一方で、自主防災組織への支援をしっかり継続しながらですね、地域の皆さんに安全安心のまちづくり、お一人お一人ですね、しっかりとした問題意識を持って頂くよう色々な取り組みをしていきたいと思っています。

 ソフト面では、防災の人づくりとでも言いましょうか、こういった事にしっかりと目を向けていきたいと思います。

 いずれに致しましてもハード、ソフト、どちらも時間のかかる話でございますが、粘り強く一つ一つ確実にですね前進するようにまた取り組んでいきたいと思います。

 

○森西議長

 松本議員。

 

○松本議員

 ありがとうございます。

 水害、そして地震にもしっかりと対応され、安全安心のまちづくりを継続して鋭意進めて頂くよう要望致します。

 安全安心は、まちづくりの骨幹であります。私もまた継続してしっかりと提言して参ります。

 

 

(音声データ等より作成)

※当該質問に関係のない他の質問項目の部分は省略しています。


Ⅳ 今後の取り組みについて

 6月議会での質疑において、本市の水害対策等はまだまだ不十分であり、継続して取り組んでいかなければならないことが明確化しました。

 私自身も提言を議会にて継続していかなければなりません。

 

 また、2021年7月30日に総務建設委員会での鳥飼まちづくりグランドデザイン河川防災ステーションに関する協議会が開催されました。

 そこで高台まちづくりについての報告があり、垂直避難が可能な高さを示し、公共施設等をかさ上げ、民間施設にも協力して頂く形を考えていきたいという事でした。

 それに関しては相当な時間と財源も必要なことから、私は広域避難における道路ネットワーク向上、逃げられるまちづくりもしっかりと検討すべきと提言しました。広域避難のルートを資料としてまとめ、そのルートを整備することも必要不可欠です。

 さらに集会所や企業の倉庫などに浸水想定の表示板を取り付けることも提言しました。逃げることが前提とする場合、自分たちがどのような状況にいるのか、なぜ避難しなければならないのか等、啓発することが必要です。市は一部実施しているものの、まだまだ数が足らず、検討していくと答弁しました。

 

 また河川防災ステーションの上部施設のレイアウト案も市は示しましたが、私はレイアウトを作成する前に上部施設の地域防災計画での位置づけ、その役割をまずは明確化すべきと意見しました。施設の役割を示した詳細な資料が無かったのです。有事だけでなく、平時についてもありませんでした。

 消防との協議もまだ行っていない状況で、レイアウト案だけが先行する形は極めておかしな状況でしたので、そこを指摘しました。役割を適切に果たすことができる施設・レイアウトかどうか、判断できるわけがありません。

 

 まだまだ、広域避難の取り組み、河川防災ステーションについて協議を綿密に進めていく必要があると考えています。

 

 

 そして、議会最後に市長が言われたように、大災害から命を守るには「自助」、「共助」、「公助」のバランスとその連携が非常に重要となります。

 

 その骨幹は、やはり「」です。

 

 安全・安心のまちづくりに向けた「人づくり」をしっかりと取り組んでいくことが重要となります。

 

 私は、本市の危機管理体制の改革を実現し、危機管理級部長職員と危機管理専門部署を新設し、公助の組織体制を大幅に強化しました。

 また、共助の核となる地域防災リーダーである「防災サポーター」制度も実現、消防団の能力向上にも取り組み、共助の人材育成に取り組んでいます。

 自助についても学校での防災教育や、啓発パンフレットの配布などでの向上を提言しています。

 

 しかし、まだまだあるべき姿には程遠いのが実情です。

 

 今後も引き続き、市民の命を守る防災力の充実に取り組んでまいります。

 

 

Ⅴ 関連リンク