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簡単に負担なく、子どもの語彙力を高める「振り漢字」について


Ⅰ はじめに

 この学習方法はすごいですよ!!

 

 市民の方から教育に関する情報提供を頂きました。

 

 「親にも子にも負担が無い。」とても効果的な学習法なのですと。

 

 それは、「振り漢字」というものです。

 

 小学生1年生(現2年生)子どもの教科書(国語だけ)に、ひらがな表記の文章に振り仮名ならぬ「振り漢字」を付けた。そうすると、その子どもは勝手に漢字が読めるようになっていった。不思議なことに、たったそれだけで、巷にあふれる漢字を一年間で大分読めるようになっていた。というのです。

 それで読書活動も盛んになり、学ぶ姿勢が積極的になったといいます。

 

 具体的にどのようなものか、以下で紹介します。

 

 


Ⅱ 振り漢字とは

1.実例

「振り漢字」とはなんぞやと。

 

 それが右写真の通りです。「振り仮名」ならぬ「振り漢字」を保護者の方が国語の教科書に消えるペンで、ひらがなのところに書き加えています。

 

 なぜそのような取り組みを始めたのでしょうか。保護者の方にお聞きすると以下の回答がありました。

 

 保護者の方は、『これは、本文のひらがなに漢字を振ることで、その2つを併記しておけば、勝手に楽に漢字を覚えられるのではないかと思ったからです。

 そして国語なら毎日音読の宿題がある為に見る回数が多く、本人が本文と振り漢字とを見ながら声に出して読むことと、授業でしっかり内容も学習するので、「意味」を理解しやすいだろうと考えたからです。

 とにかく見慣れることが大事で、漢字を見慣れ、いくつかの漢字を知っていることで教科書に載っていない漢字であっても推測力が働くようになり、読める漢字自然に増えて来るのではないかと思いました。

 また、一年生であれば、松本さんが書いておられた機械的な記憶(ブログ参照)もまだ可能なのではないかと考えたのもあります。漢字を読める=意味を理解していることなので、語彙力も自然にアップするし、アップすればするほど物事の理解を助けるのに役立つだろうと思いました。

 もしも読み方が分からなくても、漢字の意味さえわかっていれば、ある程度難しい書物も自分で読み進められるようになります。』と仰っていました。

 

 そして国語の教科書に「振り漢字」をつけて、あとは子どもは普通に授業を受けて、音読の宿題をやっていただけ、それ以外に特別なことはされていないということでした。子どもの負担は0と認識されています。

 

 下記写真は実例の一部です。

 

2.成長の一例

 保護者の方から、子どもが去年入学して以来、国語の教科書に振り漢字を書き入れた結果、これらを読めるようになりました、と読めるかどうかを試されたものを文章にしてもらい、教えて頂きました。

 

 それが添付する5枚の写真です。

 

 「5月中旬」、「8月上旬その1」、「8月上旬その2」は、保護者の方が中学2年生の漢字ワークブックを参考に、「8月中旬 学校生活編」と「意味を推測できるか編」は、保護者が考えたもので、それらでのテスト結果を示したものです。

 

 「振り漢字」をしたところ、とても多くの漢字を自然に覚えるようになり、読むことができるようになったというのです。(書くものではありません。)

 

 すごくないですか??

 小学2年生で、ここまで読めるのは??

 「振り漢字」を行った効果で、教科書にも記載されれいない漢字も読めるものが多かったとのことです。

 

 この事は、この小学2年生の子どもの語彙力高いことを示すものです。

 

3.成長の好循環へ

 実際に、それだけ漢字を読めるようになって、その成果について質問をしました。

 

 保護者の方は、以下の点を挙げています。

 

①  図書館で本を借りるのが好きになった。

②  本を読むのが速くなった。

③  難しめのYouTubeでも、字幕を出してくれるから一人で見られるようになった。

④  漢字の「偏」や「つくり」の構成を見て、漢字の意味が推測できる率が高くなってきて、ますます漢字が分かるようになってきた。

⑤  「自分は読めるんだ」ということと、大人が褒めてくれることが自信になって、自己肯定感が高まってきた

⑥  「漢字の方が意味が取りやすいから、振り漢字は書いてくれた方が嬉しい。続けて欲しい。」と、子供自身が言っている。

⑦  日本地図など、全く新しい言葉(知らない地名)が並んでいるものでも、覚えたり見たりするのにハードルを感じていない。

⑧  知らない間に勝手に地名を覚えている

 

 ①~⑧について色々と列挙して頂きました。

 

 素晴らしいですよね。語彙力向上による成果です。

 私は特に良いなと思うのは、①の「本を借りるのが好きになった。」というところです。これは、つまり読書活動が盛んになっているということです。そして様々な本にチャレンジすることができるようになり、本に記載の自分の知らない新たな漢字も文脈等から推測したりして、勝手に学んでいる好循環ですよね。

 また、漢字は至るところに溢れていますから、それを見ても勝手に推測して理解していくのが自然に行われているのでしょう。それは⑧の「知らない間に勝手に地名を覚えている」ということからも明らかです。

 

 この事については、私自身も小さい頃から戦記物の本が好きで、大人から習っていないこの漢字がよく読めるねと言われた経験があるので、十二分に理解できるものです。

 

 そして読書活動の重要性については、ブログでも取り上げていますし、教育委員会でも学力向上欠かせないものと認識しています。想像力を高め、また論理力も身に付くでしょうし、いわゆる地頭の良さにつながるものです。

ブログ:「児童・生徒の生きる力を養う読書習慣の定着化に向けて

 

 

4.先行事例

 この「振り漢字」については過去に小学校で実際に実験されています。保護者の方からご紹介頂きました。

 下記はウィキペディアからの引用です。

 出典 ウィキペディア【読み先習の法則

 

「成城小学校での実験とその結果」

 澤柳が校長を務めた成城小学校では漢字を教える時期を繰り上げて、1年生の段階から1000字以上の「漢字の読みだけを先に教える」ようにした。当時の国定国語読本は「ハナ」「マメ」「ハト」などのカタカナから始まっていたが、カタカナの単語の横に赤線を引き、それぞれに「」「鳩」「豆」という漢字をあらかじめ書き込んでおいて、それを子どもたちに読ませた。澤柳たちは「ふりがな」ではなく「ふり漢字」のついた教科書を使って文字を教えた。

 この実験結果は1921年(大正10年)に『読方教授の革新』として出版された。それによると、1年生末の段階で漢字読み取りは平均500字直接教えていない書き取りでも平均200字が習得されたことが確認された。当時の1年生が学ぶ漢字は約50字だったので、それをはるかに超える成果が得られた。

 

 1920年代での小学校の実験において「ふり漢字」が大きな成果を上げたことが上記のように記載されています。今回の保護者の方の紹介は、あくまでもお子さん1人の事例ですが、過去の事例も踏まえれば、その子だけの奇跡では無いということが分かります。

 「振り漢字」を実践すれば、お子さん誰しも漢字を無理なく覚えられるということでしょう。

 

 


Ⅲ まとめ

 この学習法はとにかく、親にも子にも負担が無い

 

 保護者の方は、「振り漢字を施す際、念の為調べることはあっても、基本、スラスラ書けるから、本当に親にも全く負担が無くてありがたい。

 そして振り漢字を一年間施しただけで、メッチャ読めるようになってすごい。子供にとっても何も負担が無かった。それやのに読んだら大人が絶賛してくれるから本人も嬉しがってる。いいこと尽くし。」と仰っていました。

 

 

 合わせて「これが摂津市の小学校で取り入れてくれたら、子ども達はどんどん賢くなるのに。」とも仰っています。これには、私も応援したいと考えています。

 

 

 

 ただし、この事については壁があります。学習指導要領に記載されていないことをどこまで推進できるのか、という事と、教育委員会や現場教師の協力をどこまで得られるかということです。

 

 保護者の方は、以下の様に懸念されています。

 

 『先生方は、「教えてない漢字は子供は理解できない。」という思い込みがあるのかもしれないです。逆に、「習いさえすれば、(初見の漢字であっても)練習することで覚えるはず。」という考えもあるかもしれません。

 ただ、子供が漢字に苦手意識が芽生えてしまうのと、漢字は理解できるという自信があるのとでは大違いです。

 もし、学習指導要領が全てにおいて正しいのであれば、例えば、「一年生、二年生用」として、ほぼ「ひらがな」だけの図鑑が必要ということになります。でも、大概の子供向けの図鑑は、漢字表記にふりがな付きで、「一年生、二年生用」なんてものはありません。

 漢字表記にふりがな付きの図鑑が子供向けの商品として成立しているのであれば、教科書も学校生活も同じ方法でいけるのではないかと思う次第です。』

 

 

 保護者の方の懸念は、私自身も同様に持っています。つまり学習指導要領というフォーマットに固定観念をもった教師は、子ども為になろうとも、フォーマットをはみ出すことはできないと拒否反応を示すのではないか、という懸念です。当然のこと全てではありませんが、就学前教育でのアンケート結果でも固定観念を強く持たれている方がおられることは事実ですし、あることはあるというものですね。当然のこと、それ以外にも保護者の協力も不可欠ですし、どう理解してもらうのかも含めて、色々と課題ありです。

 

 合わせて保護者の方から、この取り組みの有用性についての補足です。

 

『「磁石」の「磁」という字を例に取ると、「磁石」は6年生で習うまでは、学校生活では「じ石」と表記しています。「磁石」を見慣れた子なら、「磁石の磁を習う時が来た。」と思えますが、「じ石」しか見たことのない子は、「今日から、あの『じ石』の『じ』は『磁』に置き換える。」と感じるでしょう。

 そして、漢字が苦手になってしまったお子さんは、漢字の勉強とは、まず1対1の置き換えの法則を覚えること、という風に感じているかもしれません。

 あまり見たことのない字形でも同じ形で書けるようになること、書き順を覚えること、読み方も意味も同時に覚えること、「じ石」「じ場」「じ力」「じ気」「じ針」「じ器」「じ極」など、置き換えの法則をたくさん提出されること、このような思考回路になっているのかもしれません。

 「磁」の意味で括られる同じカテゴリーに入っている熟語だと思えずに、一つ一つの熟語を置き換える感覚で覚えている子は、よく知らない熟語を提出されたら、まずは知ってる熟語の置き換えの習得、上記の覚えるべきことを優先させる為、語彙はあまり増えないでしょう。

 

 それに比べて、元々漢字表記の文章を見慣れていれば、字の形を概ね想起できる為、習った時に書くのが容易になるでしょう。元々「磁石」の意味を理解しているのであれば、初見の熟語(例:磁気、磁性)を提出されても楽に推測が働き、理解と記憶が早く、直接語彙が増えることにつながるでしょう。』

 

 如何でしょうか?

 なるほどなと思いませんか??

 

 

 

 以下は参考ですが、ブログ「就学前教育での語彙力向上へ、漢字教育・漢字遊びの事例」のところで、「振り漢字」について少し触れているので、その部分を抜き出して再掲載しました。なるほどなと言う内容です。

 

 『紹介して頂いた市民の方は、『小学校の教科書、特に低学年の教科書は大人でも分かりづらい。それを「振り漢字」で漢字表記をしてあげたほうが、結果として子ども達のためになる。

 事実、漢字表記した方が意味が分かりやすいものが多い。理科を例に挙げると、「しょっ角」、「方いじしんのはり」、「土しゃ」、「よう岩」、「えきの先(液の先)」など交ぜ書きやひらがな表記は意味が分かり辛く、漢字を習う度に2度も3度も覚え直さないといけない。

 小学三年生は、「えき」と言われたら「駅」が思い付くであろう。そもそも三年生では「液」と言う言い方自体使わないであろうから、液体の説明を受け、それを「液」と呼ぶと漢字で教えてもらったほうが、すんなり新しい語彙として吸収できるであろう。

 習ってない漢字を「子どもが書く」のは「ひらがな」でいいとして、大人は「土砂」等、最初から漢字表記して、振り仮名を振るなど併記して教えてあげた方がかえって親切だと考える。当たり前だが、海外では単語を教えるのに、最初から子供にも大人と同じスペルで教えるであろう。今の取組みでは、むしろ子どもの負担が増えていると、感じざるをえない。』

 と、感想を述べられている。』

 

 


 

追記 2024.1.29

 

 「振り漢字」をされているお子さんの保護者の方から、追加で成果について教えて頂きました。その要領等は以下の通りです。

〇実施日 :令和5年12月

〇対象者 :小学3年生男児(これまで振り漢字をしている。)

〇テスト方法 :上級生(中3)の漢字ドリルを読めるか確かめた。

〇評価方法 :全部読めれば○にした。読めなかった箇所など詳細は備考欄に記載した。

〇使用ドリル :株式会社 秀学社「単元別漢字3【輝】」(問題文にルビが振られている箇所はカッコ書きした。)

〇結果は下記の写真・PDFファイルの通りです・

ダウンロード
【振り漢字】の成果 3年生12月.pdf
PDFファイル 336.4 KB

 「溺愛する」や「勇猛果敢」、「名誉毀損」などよく小学3年生で読むことができたなと感心する結果でした。中3の漢字ドリルをほぼ正解しているのには驚きです。

 「振り漢字」の成果といえるのではないでしょうか。

 

 これを読まれた方はお子さんに是非とも試してみてください。 

 

 


Ⅳ 関連リンク

ダウンロード
教育の常識と(教師の研究の自由)石井勲による漢字教育の実験-四大紀要A48B45
PDFファイル 384.4 KB