Ⅰ はじめに
非認知能力の向上は学力にも反映されます。
本市の学力課題への解決策の一つとして非認知能力の向上が求められます。
その非認知能力の向上にはコト・モノ体験活動を児童・生徒へ経験させることが効果的とされています。
よって議会で取り上げる事としました。
Ⅱ 摂津市の学力の状況について
本市小中学校の学力の現状として、全国学力・学習状況調査結果の比較において、小学校では年々向上し、令和4年、令和5年度と国語、算数ともに全国平均とほぼ同等の結果となりました。中学校では、全国学力・学習状況調査では横ばい傾向となっているものの、大阪府チャレンジテストでは徐々に向上してきている状況です。
一方で、全国学力・学習状況調査の質問調査結果から見られる小中共通の課題としては、依然として「学校以外で勉強する時間」が少ないことや、「自分には、良いところがある」と答える児童生徒の割合が全国平均よりも低いことが挙げられます。
Ⅲ コトモノ体験の重要性について
市は議会において以下の答弁をしています。
「平成13年に生まれた人の状況を継続的に調べる【21世紀出生児縦断調査】の特別報告によりますと、小学校高学年での自然体験、社会体験、文化的体験などの体験活動の機会は、自尊感情や我慢強さなどの非認知能力の育成に効果があるとされております。
そのような結果を踏まえまして、様々な体験活動は子どもたちの非認知能力を高めることに効果が高く、重要であると捉えております。」
私自身、民間団体の児童向けの体験学習にボランティアで参加し、その3日間の活動で、参加した児童のコミュニケーション力、考える力、自己効力感など様々な非認知能力が大きく向上したのを目の当たりにしました。
生きる力を養うこと、結果として学力を高めるには、コトモノ体験の重要性を認識し、児童・生徒にその機会を提供することが大切です。小中学校の学力、特に中学校の状況を見れば、学力だけに力を入れても限界があると考え、それを補うのがコトモノ体験ではないでしょうか。
その事を踏まえて、2023年9月27日の議会で質疑しました。
Ⅳ 議事録
令和5年第3回定例会一般質問
~本会議3日目・令和5年9月27日~ 議事録(抜粋)
5 生きる力を育むことについて
(3)コト・モノ体験の重要性について
【質疑概要】
非認知能力の向上は学力にも反映される。本市の学力課題への解決策の一つとして非認知能力の向上が求められる。その非認知能力の向上にはコト・モノ体験活動を児童・生徒へ経験させることが効果的とされている。それらについて以下の通り質疑を行った。
以下
○松本議員
(3)コト・モノ体験の重要性について、まず児童生徒の学力向上の現状と課題についてお聞かせ下さい。
(略※)
○福住議長
教育総務部長
○教育総務部長
「本市小中学校の学力向上の現状や課題について」の質問にお答えいたします。
近年の本市小中学校の学力の現状といたしましては、全国学力・学習状況調査結果の比較において、小学校では年々向上し、令和4年、令和5年度と国語、算数ともに全国平均とほぼ同等の結果となっております。中学校では、全国学力・学習状況調査では横ばい傾向となっておりますが、大阪府チャレンジテストでは徐々に向上してきております。
このように子どもたちの学力が向上してきているのは、全校で子どもたちが学び合いわかる授業に向けた授業研究を進め、結果にもこだわり取り組まれてきた成果だと捉えております。
一方で、全国学力・学習状況調査の質問調査結果から見られる小中共通の課題としては、依然として「学校以外で勉強する時間」が少ないことや、「自分には、良いところがある」と答える児童生徒の割合が全国平均よりも低いことが挙げられます。
(略※)
○松本議員
次にコト・モノ体験について、徐々に学力は向上しているものの、まだまだ課題が多いことを理解しました。
課題克服の為、子どもたちの「生きる力」を育むため、学力を高めるだけでなく、非認知能力を高めていく必要がありますが、どうお考えかお聞かせ下さい。
○福住議長
教育総務部長
○教育総務部長
現行の学習指導要領では、これまで子どもたちの「生きる力」を育む要素として「確かな学力」としていた内容を「学力」と言う言葉を使わず「資質・能力」として表現されております。この「資質・能力」にはこれまでのいわゆる「学力」だけでなく、「非認知能力」の要素が含まれており、重要であると捉えております。
これまでも、「協調性」や「忍耐力」などといった「非認知能力」については、学級活動や学校行事と様々な教育活動を育んで参りましたが、これからの子どもたちが、変化の激しい社会の中、予測困難な時代を生きる抜くためには、教科指導を中心に育まれる「確かな学力」だけでなく、学校教育活動全体でより一層、「非認知能力」を育むことにも力を入れる必要があると考えております。
○福住議長
松本議員。
○松本議員
非認知能力の向上の必要性について理解しました。
さて、先程の答弁にもあったように令和4年度の学力調査の中で、本市の中学生は全国、そして大阪府平均よりも自己肯定感が低い状況です。
本市の中学生の自己肯定感が低いのは、学力調査等の成績が低いことが関係しているのではないでしょうか、市の見解をお聞かせ下さい。
○福住議長
教育総務部長
○教育総務部長
文部科学省作成の資料によりますと全国学力・学習状況調査の結果で分析では、「自分には良いところがある」と肯定的に回答している生徒の方が、平均正答率が高い傾向にあることが示されております。
○福住議長
松本議員。
○松本議員
傾向は理解しました。自己肯定感を少しでも上げる取組みが必要です。
現状において、学力を高めていくだけでは、自己肯定感等の非認知能力を高めていくことは難しいと考えます。その中でコト・モノの体験活動が子ども達の非認知能力を高めるために重要であると考えますが、市の見解をお聞かせ下さい。
○福住議長
教育総務部長
○教育総務部長
令和5年3月に文部科学省が公表した、平成13年に生まれた人の状況を継続的に調べる「21世紀出生児縦断調査」の特別報告によりますと、小学校高学年での自然体験、社会体験、文化的体験などの体験活動の機会は、自尊感情や我慢強さなどの非認知能力の育成に効果があるとされております。
そのような結果を踏まえまして、様々な体験活動は子どもたちの非認知能力を高めることに効果が高く、重要であると捉えております。
○福住議長
松本議員。
○松本議員
コト・モノ体験が調査からも非認知能力を向上させると理解しました。私自身、民間団体の児童向けの体験学習にボランティアで参加し、3日間の活動で、参加した児童のコミュニケーション力、考える力、自己効力感など様々な非認知能力が大きく向上したのを目の当たりにしました。
そのことを踏まえて、小中学校において、コト・モノ体験活動を積極的に取り組む必要があると考えますが、市の見解をお聞かせ下さい。
○福住議長
教育総務部長
○教育総務部長
本市ではこれまで、社会的な体験活動として、中学校では企業等と連携した職種体験プログラムに代表されるキャリア教育に取り組んで参りました。また、今年度からは、小学校でも地域の事業所や企業等と連携したキャリア教育を実施しております。
今後は宿泊行事や校外学習など子どもたち自身が主体的に企画、運営に取り組むなどして様々な体験活動を充実させ、子どもたちが協働したり、地域や保護者、企業の方々など身近なロールモデルとなる大人とつながる機会を通して、非認知能力の育成にも取り組めるよう各学校を支援して参ります。
○福住議長
松本議員。
○松本議員
是非ともコト・モノ体験活動に力を入れて頂きたいと思います。非認知能力の向上は結果として学力にも返ってきます。
各行事でも受動的ではなく、主体的な活動にするよう指導を行う等を要望致します。
その際には教員の負担を減らし、かつ教員もまた学べるよう民間活力を活かすべきです。当然費用もかかるため、そういった予算も増やすよう要望致します。
以上
(音声データ等より作成)
重要と思われる部分には強調を入れています。
※当該質問に関係のない他の質問項目の部分は省略しています。
Ⅴ まとめ
教育委員会もコト・モノ体験活動の重要性は認識しています。体験活動が非認知能力の向上につながり、それは結果として学力にも返ってきます。
小中学校において、コトモノ体験を積極的に行うとともに、各行事でも受動的ではなく、児童・生徒の主体的な活動にするよう指導を行う等を要望致しました。
上図は「市の教育要領等イメージ図」です。作成した理由は以下の通りです。
「コロナ禍において、日本の教育の弊害がより一層表面化したと考えます。
様々な権威的なものに対する盲目的な姿勢や他者の異なる行動を認めない同調圧力、表面的なものだけで判断し行動してしまうことは、これまでの与えられた答えが正解とされる教育システムの中で、深く考える力が全体として不足していることを明らかにしたのではないでしょうか。横並びかつテスト成績至上主義では、生き抜く力は適切に育むことはできないでしょう。
今、その対応が求められます。(生き抜く力は、文科省が進める「生きる力」をさらに強化したものである。)」
コト・モノ体験は「生き抜く力を持つ人」の育成に欠かせません。引き続きしっかりと提言して参ります。
Ⅵ その他
令和5年度第3回定例会では、「コト・モノ体験の重要性」だけでなく、いじめ問題や教師不足、その他、様々な問題について決算も含めて質疑しました。それらについて概要を紹介します。
1.いじめ対策について
【質疑概要】
生きる力を育むためには、児童・生徒へ良好な教育環境を提供しなければならない。この阻害要因の一つがいじめである。いじめに関しては「いじめ対策推進法」において、いじめ認知の幅が大きく広がっており、本市でも影響が出ている。令和4年度の認知件数は小学校で503件、中学校で152件、令和3年度に比べて小学校で2.6倍、中学校で1.7倍と非常に増加している。
いじめ対策は喫緊の課題と捉え、質疑を行った。
2.教師不足について
【質疑概要】
小中学校講師についてHP等での募集活動を目にし、学校現場からも教員不足の話をお聞きしている。教員不足は子ども達の生きる力を育むための良好な教育環境に支障をきたすものである。そこでそれらの現状と対策について質疑を行った。
3.学校のシステム的な課題について(R4年度決算質疑)
全国学力・学習状況調査結果では、中学校では自分によいところがあるが、小学校よりも10ポイ ントも下がっております。これに関しては、 私は中学校の構造、システム上の課題があると考えております。
その大きな要因としては、先ほど言われたこともあり、また高校受験があって、テストの成績への評価重視と勉学の難易度が増すことによって成績差が小学校と比較して大きくなることです。学力メインとなり、学力が伸びないと評価されない、それによって重視される成績の評価が低いと、自己肯定感も下がってしまうと推測しております。私は義務教育において自己肯定感が下がって終えてしまうことは望ましくないと考えております。
この課題への対応が求められます。
決算質疑の議事録です。
教育課題は山積です。
システム・構造上の問題も多々あると認識するところです。国で変えるべきところが多いとは思いますが、市レベルでも改革できるところは議会で提言し、取り組んでいきたいと思います。
Ⅶ 関連リンク